近年、インターネット、スマートフォンの普及により、誰もが手軽に情報を発信・収集する時代となり、情報伝達の多様性は旧来とは比較になりません。
そんな中、インターネット上における名誉毀損行為、信用毀損行為、プライバシー侵害行為も増加しています。
求人サイトにブラック企業と書き込まれた、まとめサイトで誹謗中傷が記載されている等、企業やそのサービスについて誤情報の拡散や、悪意をもって企業価値を低下させようとする記載がなされた場合、瞬時に不特定多数の者にその情報が拡散し、多大な被害が生ずる危険性があります。
そこで、そのようないわれのない記載に対しては、速やかにインターネット上から削除する等の対処をする必要があります。
当事務所では、裁判外の任意交渉、または、裁判手続を利用し、記事の削除請求、発信者の特定、発信者に対する損害賠償等の手段によって、そのような被害拡大防止、被害回復に向けた方法をご提案いたします。
1.解決までのアプローチ
問題解決のためには、大きく分けて、記事の削除(被害拡大防止)、損害賠償請求(生じた損害の回復、発信者への責任追及)の方法があります。このうち、損害賠償請求については、インターネットの書き込みは匿名で行われることも多いため、発信者の特定も重要なポイントになります。
A.記事の削除
1.誹謗中傷記事・書き込みがインターネット上に
2.サイト管理者対する直接の要請(裁判外)
3.仮処分申立て(裁判手続)
上記2.の方法ではサイト管理者が応じない場合などに、
記事・書き込みの削除を求める仮処分命令を裁判所に申し立てます。
4.仮処分命令発令
1ヶ月~2ヶ月程度の審理期間を経て、裁判所により投稿記事削除の
仮処分命令が発令されます。削除の仮処分命令が発令されると、命令
を受けた相手方は、正式の裁判を経なくても削除に応じることが多い
ため、結果的に削除をさせるという目的を達成することができること
になります。
B.発信者情報開示請求
1.サイト管理者に対する、IPアドレス、タイムスタンプの開示請求
手段としては裁判外での発信者情報開示によるか、裁判所の発信者情報開示仮処分によるかいずれかです。発信者の同意がない限り、応じられる可能性は低く、また、発信者の記録に保存期間もあるため、並行して裁判上の請求を行うことが一般的です。
仮処分が認められた場合、10~30万円の担保金が必要です。
2.開示されたIPアドレスによる経由プロバイダの調査
IPアドレスが開示されたら、経由されたプロバイダを特定します。
3.経由プロバイダに対するログ保存仮処分
経由プロバイダが特定されれば、経由プロバイダに対し、発信者情報の開示を請求します。しかし、ログの保存期間は通常3~6か月程度であるため、開示請求をしている間にこの期間を過ぎると、一律でログが削除されることもあります。
そこで、発信者がウェブサイトへのアクセスした記録を保全する仮処分を申し立てします(プロバイダによっては任意でのログ保存も可能です)。
仮処分が認められた場合、10万円程度の担保金が必要です。
4.訴訟提起
記事の削除要請とは異なり、仮処分において、住所・氏名の開示まで求めることは困難ですので、原則として、訴訟も提起することになります。なお、裁判外で開示を求めてもほとんどの場合開示されないので、経由プロバイダに対する訴訟提起が必要となります。
C.損害賠償請求
1.内容証明等による裁判外の請求
上記の発信者情報開示によって、発信者が特定できた場合、生じた損害につき存賠償請求を行うことが可能です。まずは、裁判外での請求により支払いを求めるのが一般的です。
2.訴訟提起
相手が裁判外の請求に応じない場合には、訴訟を提起することとなります。
2.Q&A
Q:どんな書き込みでも削除できますか?
A:その書き込みによって権利侵害がされていることが必要です。
典型例は、名誉毀損やプライバシー侵害です。
Q:海外のサイトでも削除できますか?
A:国内のサイトに比べて困難な場合もありますが、可能な場合もあります。
Q:逮捕歴は削除できますか?
A:逮捕直後は、報道する側の自由が優先され削除は難しいですが、
その後の年月の経過によっては削除が認められる裁判例も徐々に
現れています。一度ご相談ください。
Q:削除要求は必ず認められるのですか?
A:認められない場合もあります。
書き込みの内容につき、権利侵害が認められない場合、技術的な制約から、
実現しない場合もあります。まずは、ご相談ください。
Q:書き込んだ人物の特定はすぐにできますか?
A:通常は、半年程度の期間を要します。
Q:弁護士費用は相手方に請求できますか?
A:裁判において判決を受ける場合には認められる場合があります。
①発信者の特定に要した費用は全額が認められる場合があります
(東京地方裁判所平成24年1月31日判決)。
しかし、裁判例によって、部分的に認めるだけの場合もあり、
事例によって判断は異なっています。
②他方で、名誉棄損による慰謝料請求をした場合の弁護士費用に関しては
認められた損害額の1割に限り弁護士費用の請求を認める場合が通常です。
たとえば、慰謝料額として10万円が認められれば、弁護士費用としては
1万円が認められることになります。