令和5年7月1日より、一定の条件を満たす電動キックボードは、「特定小型原動機付自転車」として、街中でも颯爽と走る姿が、次第に目につくようになってきました。
ただ、規制緩和されたとはいってもクルマはクルマ。酒気帯び運転や酒酔い運転をすることに問題はないのでしょうか。
1.キックボードと免許
電動キックボードが、以下の条件を満たす場合「特定小型原動機付自転車」として、16歳以上の者であれば、免許を取得することなく運転することが出来るようになりました(道路交通法(以下、「道交法」といいます)64条1項、64条の2第1項)。
- 車体は長さが、1.9メートル以下、幅0.6メートル以下
- 定格出力0.6キロワット以下
- 最高速度が20km/h以下
- 最高速度を切り替える事ができる場合は、走行中に切り替える事ができないものであること
- トランスミッションはAT構造
- 最高速度表示灯を装備
※道交法施行規則1条の2の2
ヘルメットの着用は努力義務となり(71条の4第3項)、電動キックボードは、気軽に乗れる新たな交通手段として注目を集める一方で、免許が不要であることから、運転者には自律ある行動が求められます。
2.酒気帯び運転が問題になったことも
東京都豊島区の区道で、令和5年7月7日未明、19歳の大学生が運転する電動キックボードが停車していたタクシーに後ろからぶつかり、大学生の呼気から基準値の2倍を超えるアルコールが検出されたという事件がニュースになりました。
最近では、酒気帯びの上、二人乗りで検挙されたというケースもあり、電動キックボードの適切な運用に関しては、まだまだ課題が残っていそうです。
3.酒気帯び運転は違反点数対象にならないのか
実際に、キックボードで酒気帯び(酒酔い)運転をした場合、運転者は、どのような処分を受けることになるのでしょうか?
交通違反があった場合の処分には、行政処分と刑事処分があり、自動車または一般原動機付自転車の運転者が「酒気帯び運転」「酒酔い運転」を行ったときには、行政処分として、これに対応する違反点数を課されることになります。
一方で、特定小型原動機付自転車の運転には免許が不要なため、行政処分としての違反点数の対象にはなりません。
したがって、電動キックボードで酒気帯び(酒酔い)運転を行ったとしても、それが特定小型原動機付自転車に該当する限りは、「違反点数」による免許停止や免許取消の処分を受けることはありません。
4.ただし、免許停止等の可能性も
しかし、お酒を飲んで電動キックボードに乗っても、運転免許に何らの影響もないのかというとそうではありません。
電動キックボードであっても、それが一般小型原動機付自転車に該当するのであれば、「違反点数」による免許停止や免許取消になり得ます。
また、道交法上、「免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき」は、六月を超えない範囲で免許の効力を停止することができるとされており(道交法103条1項8号、道交法施行令38条5項2号ロ)、当該条項を利用して、今後、免許停止の処分が実施されることもあり得ます。
5.最後に
違反点数対象にはならないとはいえ、酒気帯び運転は、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」の課せられる犯罪であり、危険な運転は取り返しのつかない大事故につながりかねません。
電動キックボードもルールを守って、適切な運転を心がけましょう!
以上