本制度の開始前まで、各市区町村において保有していたのは、出生届等に記載された氏名の「よみかた」で、これは住民基本台帳事務の処理の便宜のために使用されていました。
本制度の開始後、本籍地の市区町村から戸籍に記載される予定の氏名のフリガナが通知されます。
市区町村から届くフリガナの通知を確認し、誤っている場合には令和8年5月25日までに届出をしましょう。
なお、通知されたフリガナが正しい場合には、届出不要です。
1.戸籍にフリガナを記載する制度の背景
・行政手続の効率化
漢字には複数の字体が存在し、データベースでの検索や処理に時間がかかることがありました。フリガナを記載することで、データ管理が容易になり、誤りを防ぐことができます。また、行政のデジタル化を推進するための基盤整備としても、この制度が重要視されています。
・本人確認の精度向上
フリガナが戸籍に記載されることで、住民票やマイナンバーカードにも反映され、本人確認資料として利用でき、確認の精度も向上させることができます。
・規制逃れの防止
フリガナによって、金融機関などで複数のフリガナを使用して別人を装う行為を防ぎやすくなります。
2.具体的な手続きの流れ
①通知の確認
・本籍地の市区町村から、戸籍に記載される予定の氏名のフリガナが通知されます。
・通知内容を確認し、誤りがある場合は届出を行う必要があります。
②届出の期間
・令和8年5月25日まで届出を行うことができます。
・届出を行わない場合、市区町村からの通知に記載されたフリガナがそのまま戸籍に記載されます。
届出の方法
・市区町村の窓口へ持参、郵送、オンライン(マイナポータル)の3つの方法があります。手数料はかかりません。
・「氏」のフリガナは原則として戸籍の筆頭者が行い、「名」のフリガナは各人での届出が可能です。
・届出をしなくても、罰則はありません。
届出に必要な書類
・市区町村から受領した通知書(可能な限り)
・一般的でない読み方を届け出る場合は、その読み方が通用していることを証明する書類(例:パスポートや預貯金通帳の写し)
3.注意点
氏名のフリガナについては、「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」との規律が設けられました。
例えば、一般的な漢字の意味・読み方とは全く関連性がない、漢字の意味とは反対の意味の読み方、極端に奇抜である場合、社会的に不適切とされる読み方は認められない可能性があります。
【認められない可能性のある例】
・太郎 → マイケル、ジョージ
・健 → ケンサマ
・高 → ヒクシ
4.フリガナの変更
・「氏」のフリガナ
やむを得ない事由によって「氏」のフリガナを変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者が、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければなりません。
・「名」のフリガナ
正当な事由によって「名」のフリガナを変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければなりません。
・例外手続
ただし、上記にかかわらず、制度開始から1年の間にフリガナの届出がないことで、本籍地の市区町村長によって氏名のフリガナが戸籍に記載された場合は、氏名のフリガナについて、1回に限り、家庭裁判所の許可を得ることなく届出のみで変更することが可能です。
5.制度開始後に出生した子は?
制度開始後に出生や帰化等により、初めて戸籍に記載される者については、上記の届出手続によらず、出生届や帰化届等の届出時にあわせてそのフリガナを届け出ることとなります。
6.最後に
まずは、自身が普段から使用している氏名のフリガナを確認しておきましょう。
仮に、預貯金通帳やパスポート等と異なるフリガナの記載となった場合、今後、本人確認等で不都合が生じ、変更手続をとらなければならない可能性があります。
また、このような新制度開始時には、届出に便乗した詐欺(例えば、法務省や市区町村を装い、手数料や罰金を要求する詐欺など)の発生もまま予想されます。さらに、役所になりすまして、個人情報を不正に取得しようとするケースも考えられます。
少しでも不審に感じたら、法務省や市区町村の公式情報(以下の参照HP)を確認したり、直接、市区町村に問合せするなど、相手からの一方的な連絡には応じないようになさって下さい。
【法務省等の参考HP】
法務省:戸籍にフリガナが記載されます