2024.11.21

知らないと損する!相続登記義務化の背景と正しい対処法

1 なぜ、不動産(土地・建物)の相続登記が義務化されるの?

これまで、相続が発生しても登記がなされないため、登記簿をみても所有者が明らかでない「所有者不明土地」が全国各地で急増し、相隣問題や公共事業の阻害など、様々な社会経済問題の要因となっていました。このような問題を解決するため、これまで任意だった相続登記が、令和3年の民法等の一部を改正する法律により、義務化されることとなりました。

2 義務の内容はどういうもの?

以下を基準に、法務局に登記の申請をする必要があります。
(1)不動産の所有権を相続で取得したことを知った日から3年以内
(2)遺産分割協議で取得した場合、遺産分割から3年以内

3 具体的にはどうしたら良いの?

(1)相続登記の申請
 ご自身が単独で相続したのであれば、速やかに、相続登記を行いましょう。
 相続人間で話合う必要がある場合、まずは、誰が不動産を取得するのか早めに話合いを行いましょう。

誰が不動産を取得するかについて意見が対立し、話合いがスムーズに進まない場合には、家庭裁判所における遺産分割調停の申立てを検討する必要があります。
(→相続人全員が不要な土地ということで揉めるのであれば、「相続土地国庫帰属制度」の活用を検討しても良いかもしれません。)


(2)相続人申告登記の申出
 仮に、なかなか話合いがまとまらないということであれば、戸籍などを提出して、①相続が開始したことと、②自身が相続人であることを申告する「相続人申告登記の申出」という簡易な手続をとることにより、同様の義務を果たしたことにもできます。この申出は、相続人が複数人いる場合でも単独で行うことが可能です。


(3)追加的な申請
 法定相続分での相続登記がされた後や、相続人申告登記の申出をした後に、遺産分割が成立した場合には、その内容を踏まえた登記申請を遺産分割の日から3年以内に、登記の申請をする必要があります。

4 過料にならない「正当な理由」とは?

申請をすべき義務がある方が、正当な理由がないにもかかわらず申請を怠った場合、10万円以下の過料に処することとされました。
この「正当な理由」の有無についての判断は、登記官において一切の事情を総合的に考慮して行うものとされていますが、具体的には、以下の事情がある場合、正当性が認められると考えられます。
・相続人が極めて多数で、かつ、戸籍関係書類の収集や相続人の把握に多くの時間を要する場合
・遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人間等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
・申請義務者に、重病等の事情がある場合や、配偶者のDV等により避難を余儀なくされている場合、経済的に困窮し費用を負担することができない場合など

5 経過措置

登記の義務化は、令和6年4月1日から開始しますが、この施行日の前に発生した相続により所有権を取得した不動産も、義務化の対象になります。
この場合、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日又は当該施行日のいずれか遅い日から3年以内に、その所有権の移転の登記を申請しなければならない」とされています。

6 最後に

 相続登記の申請について、いざ自分で戸籍の収集から始めようと思っても、専門的な知識が必要であったりして、一筋縄でいかないことも少なくありません。

 特に施行日以前に発生した相続で、何世代かに渡り所有権移転登記がなされていなかったようなケースでは、相続人が非常に多くなり、戸籍の収集手続きが煩雑となります。そして、相続人の中に所在のわからない方や海外に居住されている方がいらっしゃるような状況になっていることも考えられます。

 所在不明の相続人がいる場合、その調査を個人で行うことは難しくなります。

 

このような事態も想定し、時間に余裕をもって手続きに着手することが大切です。

 
 弁護士においては、遺産分割の協議のみならず、相続登記申請業務までも行うことも出来ますので、未登記の相続不動産についてご不安があれば、お気軽に、弁護士法人クローバーまでご相談下さい。