2023.12.14

電子帳簿保存法の改正、2024年(令和6年)1月から開始の電子取引データの電子保管義務化について

1.電子帳簿保存法と電子取引データの保存義務について

⑴ 電子帳簿保存法

 電子帳簿保存法は、税務関係調査書類を電磁的記録として保管する為に定められた法律であり、同法の改正により、2024年1月1日から、事業者は、電子取引データを、紙ではなくデータで保存することを義務づけられます。
受け取った場合だけでなく、送った場合も保存しなければならない点に注意が必要です。


⑵ 電子取引データって何?

 「電子取引」や「データ」と、いきなりいわれても、あまりピンと来ない方も多いのではないでしょうか。
「電子取引」とは、「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」をデータで授受する取引をいい、送受信される注文書等の書類データを「電子取引データ」として、今後、保存してゆくこととなります。
 メールで注文書や見積書などをやりとりする取引も電子取引に含まれますので、事業者への影響も大きく、今後、気を付けていかなければなりません。
 ちなみに、法律事務所で根強く人気なFAXは、機器の種類によって扱いが異なり、用紙で出力・送信するタイプは書面による取引となりますが、複合機等のファクシミリ機能を使って送受信し、データが保存されるタイプなどは「電子取引」にあたります。
『国税庁HP電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)より:
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/030628/pdf/02.pdf

 

⑶ 紙の書類はどうするの?

 見積書や請求書、領収書を紙でやりとりしていた場合は、どうでしょうか。
電子取引データの保存義務は、紙の書類を無理矢理データ化するよう義務づけるものではありません。
ですので、紙の書類を、改めて、スキャンし直したりする必要はなく、今まで通り、紙のまま保存することができますし、一定の要件を満たせば、紙の書類もスキャンデータで保存することもできるようになりました(この点は別のコラムでも解説していきたいと思います)。

2.保存方法について

では、電子取引データを保存するとして、どのように保存すればいいのでしょうか。いくつか要件があり、以下の措置をとる必要があります。

 

⑴ ディスプレイとプリンターの設置

 税務署から求められた時に、電子取引データを出力できるよう、パソコンのディスプレイやプリンターを用意しておかなければなりません。

 

⑵ 電子計算機処理システムの概要書の備え置き

 データ作成ソフトのマニュアルなどのことで、事業者自身が開発したプログラムを使用する場合には、備え付けが必要となります。

 

⑶ 改ざん防止措置

 保存したデータが改ざんされないよう、「タイムスタンプ付与」や「履歴が残るシステムでの授受・保存」といった方法をとることとなります。
改ざん防⽌のための事務処理規程を定めて守ることにしてもよく、国税庁のホームページでもサンプルを公表しています。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm

 

⑷ 検索可能措置

 保存する電子取引データは、「日付・金額・取引先」で検索できるようにしておく必要がありますが、専用のシステムを導入しなくてはならないということではなく、表計算ソフト等で索引簿を作成したり、ファイル名に規則性をもって「日付・金額・取引先」を入力して、フォルダに集約して検索できるようにしたりするなどの対応でも構いません。
 また、2課税年度前の売上高が5,000万円以下の事業者の方や、電子取引データをプリントアウトして日付及び取引ごとに整理されている方については、ダウンロードの求めに応じることができるようにしていれば、検索要件は不要です。

 

3.違反すると罰則も?しっかり準備して適切な記録の管理を!

 最近では、メールで見積書や請求書をやりとりする事業者の方も増えてきており、2024年1月1日より、多くの事業者が、影響を受けることとなります。
加えて、電子帳簿保存法に違反して電子取引データの保存を怠った場合、事業者は、青色申告の承認の取消しを受けて税制上の優遇措置が受けられなくなってしまったり、会社法976条に違反にあたるとして100万円以下の過料に課せられる可能性もあります。
早めに準備して、適切な対応をとることをお勧めいたします。

 

以上