2023.12.21

来春にも、ライドシェア 地域・時間を限定して解禁?!政府の方針案が明らかに。

 

 米国では「カープール」と呼ばれる、出発地・目的地が同一の人々による通勤時のマイカー相乗り(ライドシェア)がポピュラーな交通手段の一つとなっていますが、先日、政府が検討を着手した、日本におけるライドシェアはどのようなものかをご紹介したいと思います。

 

1 ライドシェアとは?

 「ライドシェア(Ride-sharing)」は、直訳すると「相乗り」ですが、その意味合いは有償によるもの、無償によるものを含め様々です。
 昨今、国会等で議論されている「ライドシェア」は、自家用車を使って、一般のドライバーが有償で人を運ぶサービスが前提となっています。

 

2 日本における法規制


■有償での自家用車利用

原則:日本では、道路運送法78条によって、自家用車を「有償」で運用に利用することは禁止されています(いわゆる「白タク」問題)

例外:以下は、例外として除かれています(同法78条1号~3号)。

  1. 災害のため緊急を要するとき
  2. 市町村、NPO法人等が国土交通大臣の登録を受けて行うとき
  3. 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して行うとき(介護タクシーや児童の送迎等)

上記例外をみますと、有償での自家用車利用はかなり限定的となっています。

 

■無償での自家用車利用

 無償によるライドシェアは、道路運送法上による規制の対象外のため、国土交通大臣の登録又は許可を受けることなく実施可能です。

 

ここで、「有償」についてどこまで厳格に規制するかですが、
2018年3月に国土交通省から出された通達によると、利用者の提供者に対する給付が、「好意に対する任意の謝礼」と認められる場合や「金銭的な価値の換算が困難な財物や流通性の乏しい財物など」によりなされる場合、また、ボランティア活動として行う運送において、実際の運送に要したガソリン代や有料道路使用料、駐車場代のみを収受する場合は許可などを要しないとしています。

 

3 ライドシェアのメリット


(1)利用者側
 ・公共交通の空白地域やタクシーが不足する地域・時間に、移動手段が増える。
 ・利用料金が一般的にタクシーよりも安価となる傾向で、移動にかけるコストを抑えられる。

 

(2)提供者側
 ・自家用車を提供する側にとっては、既存の財産(マイカー)と隙間時間を利用して、手軽に稼いだり、売上げでマイカーの維持費の負担を減らすことが可能。
 ・同じ方面に行く者が相乗りという形で利用すれば、環境への配慮ともなる。
 ・二種免許は不要。

4 ライドシェアのデメリット(問題点)

・提供者はあくまでマイカーを活用する一般ドライバーであるため、ドライバーの質や運転技術、車両性能や安全性も、タクシーのように担保されているとはいえない。

・利用者と提供者の利用契約がライドシェアのプラットフォーム上によるものである場合には特に、当事者間のトラブルにもある程度の注意を払う必要がある。

多くのタクシー会社では、入社後、運転技術の義務研修があり、運行時には都度、車両点検や運転手のアルコール検査を実施し、接客対応に問題があれば当然、会社での評価にもつながりますが、一般ドライバーについて、どこまでこのような安全性を担保できるかへの懸念は、国会の議論のなかでも消極意見として多くあげられています。

 

5 政府方針案

 現在、検討されている政府の方針は、ライドシェア導入のメリット・デメリットを踏まえ、概要として以下のようになっています。

・タクシー不足の地域・時間帯(対象はタクシー配車アプリのデータ等のもと判断)に限定して、一般ドライバーを活用。配車アプリで依頼しタクシーが不足する場合、一般ドライバーがマイカーで迎えにくる。

・安全性を確保するため、タクシー会社が運行管理を行う。

・距離に応じて、国が許可したタクシー運賃を適用する。

・タクシー会社が一般ドライバーと雇用契約を結ぶ形態以外のほか、業務委託契約も並行して検討。あわせて、タクシー会社以外の新規参入は可否の検討も継続して行う。

 なお、導入時期については、本年度中に制度を具体化し、来春にも実現させる予定とされています。

6 最後に

 ライドシェアは、慢性的なタクシー不足の緩和や公共交通の空白地域に交通手段を与える有効な手立てであると考えます。これらの改善策として、米ライドシェア大手の会社では、自動運転タクシーを自社サービスで導入する動きを見せているようですが、既存資産の活用や導入の手軽さにおいては、ライドシェアの評価がなされるのではないかと思います。

 ただ一方で、事業の契約形態によっては、事故やトラブルが発生した場合の責任の所在や、自家用車への商用保険の適用問題など、安全性担保のほかにも検討課題は少なくないでしょう。暮らしに直結する問題なだけに、引続き、政府の具体策の発表には注目が高まりそうです。

 

追記(予定)

次の項目についても追記していく予定です。
ご期待ください。

 

・バイクでのライドシェアはできる?
・中学生はライドシェアできるのか?
などなど

 

中学生以下の労働は、労基法56条2項で認められたものはOKとされています。

労働基準法56条2項

「映画の製作又は演劇の事業」
「児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なもの」

※ 新聞配達などは学業に支障を来さない意味で昔から許可されています