2024.02.29

「家族円満の鍵! 遺言の役割と種類」

1.遺言とは

遺言とは、被相続人の最後の意思表示について、その者の死亡とともに法的効果を生じさせる制度です。
遺言作成者は、遺言によって、遺留分に反しない範囲で、どのように各相続人に遺産を分配するか、自由に定めることができます。
相続争いは、経済的な問題だけでなく、感情的な対立から発生することがあり、遺言は、相続争いを回避する上で、とても重要な役割をもち、本稿では、遺言の役割や種類について説明していきます。

 

2.遺言の役割

⑴ 相続人の負担の軽減
相続開始時に、遺言が存在する場合、預金口座の凍結の解除、引き出しや相続した不動産の登記手続など、遺産分割協議をすることなく手続を進めることができ、相続人となるご家族に負担をかけずに、効率的に遺産分割を進めていくことができます。

 

⑵ 遺産トラブルを予防できる
また、遺産は遺言に従って分配され、遺言の内容と異なる遺産分割をするよう協議するためには、相続人全員の同意が必要となりますので、相続人間でトラブルになることも予防することが可能となります。

 

⑶ 遺産分割に被相続人の意思を適切に反映できる。
さらに、特定の相続人に、より多くの財産を分配したいときなどにも、ご自身の意向を遺産分割に反映することができ、ご家族と遺産をどのように分けていくか、話し合いながら決めていくこともできます。
例えば、相続人の中に、ご自身の介護や同居などで、お世話になっているご家族がいる場合、その負担分に応じて財産を多く分配したりすることも可能です。

 

3.遺言の種類

有効な遺言を作成するためには、法律の定める方式に従わなければなりません。
民法では、普通の方式として、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の方式が定められており、遺言作成者は、三つの方式の中から方式を選んで作成することとなります。

 

⑴ 自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言作成者自身が、遺言の全文、日付及び氏名を記載し、押印して作成する遺言で、一番オーソドックスな方式の遺言です。
民法の改正に伴い、財産目録は、ページごとに署名押印すれば、ワープロ等で作成できるようになりました。
費用がかからず、修正や書き直しが手軽にできるというメリットがある一方、遺言を無くしたり、遺言の存在に気づいてもらえなかったりと、紛失するリスクがあり、一部の相続人により、遺言が、偽造、変造されたり、破棄されてしまうといった危険もあります。
2020年7月から自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度が始まり、紛失・変造については、ある程度防ぐことができるようになりました。
ただし、法務局では、遺言が法的に有効かどうかをチェックしてくれるわけではありません。
自筆証書遺言は、ほとんど手書きで書かなければならない上、ご自身で作成することとなるため、日付、署名、捺印がないなど、形式に不備があって遺言自体が無効となるといった課題が残ります。

 

⑵ 秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、公証人と証人2名に、遺言の存在を証明してもらう方式の遺言です。 遺言の内容は本人だけの秘密とすることが可能で、自筆証書遺言と公正証書遺言の合いの子と言われますが、あまり利用されていないのが実情です。
たしかに、秘密証書遺言は、公証役場に遺言の存在を証明してもらうので、相続人が、公証役場で確認をとれば、遺言の存在を知ることができます。 また、秘密証書遺言は、パソコンで作成でき、第三者に書いてもらうことも可能な上、手数料も11、000円と、公正証書遺言よりも比較的安価で作成できるというメリットもあります。
しかし、公証役場に保管されるのは、遺言の封紙の控えだけであり、遺言自体はご自身で保管することとなります。 従って、遺言がどこに保管されているか分からずに見つけることができなくなることもありますし、紛失や、偽造・変造、破棄といったリスクは残ります。
また、秘密証書遺言は自筆証書遺言保管制度を利用できないことから、法務局に預かってもらうことはできず、この点、紛失・変造のリスクは自筆証書遺言よりも高いといえるでしょう。 また、公証役場では、遺言の内容までは確認してくれず、手数料や証人を2人用意する手間をかけながら、遺言の内容が法的に有効でないリスクがあり、使いやすい方式ではありません。

 

⑶ 公正証書遺言
公正証書遺言とは、証人2人の立会いの下、遺言者が、公証人に遺言の趣旨を口授し、公証人がその内容を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させ署名押印し、公証人が署名押印することによって作成される遺言です。
公証役場で作成するため、手数料がかかり、証人を2人用意しなければなりませんが、遺言は、公証人が筆記して作成いたしますので、遺言作成者の意思能力が問題となる場合でない限り、遺言が、無効な内容となる可能性は低いです。
また、遺言作成後、遺言作成者は写しの交付を受けることとなり、原本は、公証人が公証役場で保管しますので、作成した遺言が紛失したり変造されたりするリスクはなく、相続人は、相続時に、全国の公証役場で、公正証書遺言の有無および保管公証役場を検索することができます。
加えて、遺言作成時に意思能力が問題となって有効性が争われた場合にも、証人2名が立ち会って、遺言者に公証人が、読み聞かせる形で作成される公正証書遺言は、他の方式の遺言と比べて有効性が認められやすい点も大きなメリットです。
以上の利点から、公正証書遺言は、年間11万件も作成されており、非常に多くの方に選ばれている方式の遺言です(『日本公証人連合会「遺言公正証書の作成件数について」/令和4年』)。

4.弁護士に依頼する理由

それでは、遺言の作成を弁護士に依頼するとどのようなメリットが有るのでしょうか。

⑴ 正確で有効な遺言を作成することができる。
弁護士に依頼することで、方式を問わず、法律に定められた形式に則って遺言を作成することができ、あとになってから形式や内容の不備により遺言が無効となってしまう事態を防ぐことができます。
また、どのような記載内容にすれば、適切に遺産を分配できるか、法律の専門家の視点からアドバイスを受けることができますので、安心して遺言を作成することができます。

⑵ 自分の意思を適切に遺言に反映できる。
遺言が法律上効力を有さなければならないのは当然ですが、遺族の方々に最後のメッセージを残したいというクライアントも少なくありません。
そのような場合でも、弁護士であれば、法的な部分と、ご家族へのメッセージとを区別して付言事項として、遺言の有効性を残しつつクライアントのご意向に沿った遺言を作成することが可能です。

⑶ 遺産トラブルを回避して結果的に多くの資産をご家族に残すことができる。
弁護士に遺言の作成を依頼すると高額な作成費用がかかるのではないかと心配されるかたもいらっしゃいます。
しかし、遺産分割調停となると遺言作成と比べて報酬・費用が高額になるため、遺言作成時に弁護士に作成を依頼して相続争いを予防しておいた方が、結果的に、より多くの財産をご家族に残すことができます。
また、相続人間でトラブルがない場合であっても、相続人一同が、遺産分割協議をおこなって相続手続をするのは、並大抵の労力ではありません。
当事務所では、自筆証書遺言は11万円、公正証書遺言は22万円より作成させていただいており、公正証書遺言の場合、公証役場の窓口業務、立ち会い業務まで全面的にサポートさせていただきますので、安心してご利用いただけます。

最後に

自分が亡くなったときのことや、ご家族が財産のために争う姿などは想像したくない、縁起が悪いと敬遠される方もいらっしゃいますが、突然の出来事に備えて、ご家族の将来のため、現実と真摯に向き合うことは、どなたにとっても意義深いものです。
被相続人から遺言という形で、最後のメッセージを受けた時、ご家族の結束はより強固なものとなり、未来に向けて足を踏み出せるようになりでしょう。
当事務所では、遺言・相続に関するご相談を随時受け付けております。遺言の作成を希望されるお客様は、どうぞお気軽にご相談下さい。