2024.09.12

離婚と財産分与:知っておきたい7つのこと

今回は多くの方が関心を持つ「離婚と財産分与と親権」について、私の経験を交えながらお話ししたいと思います。この難しいテーマを、少しでもわかりやすくお伝えできればと思います。

 1. 離婚って、どんな種類があるの?

「離婚」と一言で言っても、実はいくつかの種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

 協議離婚

夫婦で話し合って決める一番簡単な方法です。離婚届を役所に提出するだけで成立します。手続きは簡単ですが、お互いの権利を守り、その後のトラブルを避けるためには、きちんとした話し合いが必要です。

以前、担当した案件で、「面倒な手間は省いて、さっさと協議離婚で済ませよう」としているものがありました。ただ、よく聞いてみると、財産分与や養育費のことは全く話合いがなされていませんでした。結果的にはきちんと話し合いをして、公正証書を作成してから離婚届を出すことになりました。

 調停離婚

家庭裁判所で、専門家の助けを借りて話し合う方法です。調停委員さんが間に入ってくれるので、話合いもスムーズに行きやすいですし、ある程度、法的な助言を受けることもできます。

50代の夫婦の調停離婚を担当したときのこと。最初は全く話がかみ合わなかったのですが、調停委員が双方のわだかまりをうまく調整し、少しずつ歩み寄ることができました。時間はかかりましたが、最終的には両者が納得する形で解決できました。

 審判離婚

調停がうまくいかなかった時に裁判官が判断する方法です。当事者双方の主張を聞いた上で、裁判官が離婚の可否や条件を決定します。

但し、審判離婚となるのは稀で、調停が不成立の場合、後記の裁判離婚に進むことが多いです。

 裁判離婚

最終手段として裁判所で争う方法です。

時間も費用もかかりますが、どうしても合意できない場合の選択肢です。

なお、いきなり裁判ではなく、原則は、調停が不成立となった場合に、裁判を行う流れとなります。

 2. 財産分与って、どうやって決めるの?

財産分与については、結婚中に二人で築いた財産を公平に分けることが原則です。

 財産分与の基本原則

1. 清算的財産分与 :婚姻中に共同で築いた財産を分け合う

2. 扶養的財産分与 :離婚後の生活保障のための分与

3. 慰謝料的財産分与:離婚の原因を作った側が支払う賠償的な分与

 

ある日、40代の女性から「夫が保有する株を半分もらえますか?」と相談を受けました。財産分与は、結婚中に二人で築いた財産を分けるもののため、株の取得金が夫婦の共有財産によるものかがまずポイントとなります。

このケースでは、結婚後に給与で取得したものであったため、離婚時の時価額で分与を受けることができました。

一方、株が相続したものであるときは、相手の特有財産として財産分与の対象外となります。

また、50代後半のサラリーマン夫婦の案件では、退職金の扱いが問題になりました。

結婚期間中に積立てをした退職金は財産分与の対象になります。これは意外と知られていないかもしれないです。ただし、まだ退職金を現実に取得できるか不明瞭な場合は除外されることが多いです。

 3. 隠し財産、見つけられるの?

「夫が財産を隠しているかも…」こんな相談も少なくありません。

確かに、全てを探しあてることは困難かもしれません。

ですが、以下のような調査を行うことも可能です。

隠し財産を見つける主な方法:

1. 金融機関への調査嘱託:裁判所を通じて、銀行口座や証券口座の情報を取得

2. 不動産登記簿の確認:名義人を親族まで広げて調査

3. 収入調査:課税証明、確定申告書の内容から、収入や資産の不自然な変動を見つける

4. 生命保険の確認:高額な解約返戻金がある保険契約を確認

 

以前、夫側の普段の買い物やライフスタイルとクレジットカードの引落し額が釣り合わないとする相談者にて、クレジットカードの利用明細を丹念に調べてみると、夫がクレジットでいくつもの株を買っていたことがわかりました。日頃の些細な違和感が、隠し財産発見のきっかけになることもあります。

専門家の力を借りることで、思わぬところから財産が見つかることもあります。正直に申告することが一番いいのですが、なかなかそうもいかないのが現実ですね。

 4. 子どもの親権、どうやって決める?

子どもがいる場合、親権の問題は本当に難しいです。現行法上は父母どちらかが親権者になりますが、法改正に伴い最近では共同親権の議論も活発になっています。

親権を決める際の主な考慮要素:

1. 子供の年齢と意思

2. これまでの養育状況

3. 両親の養育能力

4. 両親の経済状況

5. DV(ドメスティックバイオレンス)の有無

 

ある父親から「子供と会えなくなるのが怖い」という相談を受けたことがあります。でも、親権を持たなくても、面会交流という形で子供と定期的に会う権利はあります。大切なのは、子供の利益を第一に考えること。

最近担当したケースでは、小学生の娘さんがいる夫婦の離婚でした。両親とも熱心に子育てをしていて、どちらが親権者になるか悩んでいました。結局、娘さんの意見も聞いた上で、母親が親権者になり、父親は定期的に面会交流をすることで合意しました。

最近では、面会交流をサポートするサービスも増えています。オンラインでの面会や、専門家が立ち会う面会など、様々な選択肢がありますよ。

 5. 離婚後の生活、どう立て直す?

離婚後の生活再建、これも大きな課題です。特に専業主婦だった方は不安が大きいでしょう。

ある30代の女性相談者は、離婚を機に資格取得にチャレンジしました。社会保障制度を上手く活用しながら、新しいキャリアを築いていかれました。

離婚後の生活再建のポイント:

1. ファイナンシャルプランの作成:収支を見直し、新しい生活に合わせた予算を立てる

2. 社会保障制度の活用:ひとり親家庭向けの手当や住宅支援制度を確認

3. キャリアアップ:資格取得や職業訓練を検討

4. 心のケア:カウンセリングやサポートグループの利用を考える

5. 新しい目標設定:趣味や学びなど、前向きな目標を持つ

 

経済面では、しっかりとしたファイナンシャルプランを立てることが大切。心のケアも忘れずに。カウンセリングやサポートグループの利用も検討してみてはいかがでしょうか。

 6. 離婚の最新トレンドって?

統計によると、離婚の理由や傾向も少しずつ変化しています。以前は「性格の不一致」が多かった離婚理由ですが、最近では「価値観の違い」を挙げるカップルが増えています。

最近の離婚トレンド:

1. 熟年離婚の増加:子育て後に離婚を選択するケースが増加

2. 父親の親権取得増加:以前より父親が親権を取得するケースが増えている

3. 養育費の不払い問題:養育費の確実な受け取りが課題に

4. オンライン離婚相談の普及:コロナ禍でオンライン相談が一般化

5. 国際離婚の複雑化:国際結婚の増加に伴い、国際離婚も増加傾向

 

社会の変化とともに、離婚のあり方も変わってきていますね。

 7. 弁護士に相談するタイミングは?

「もう少し、様子見をしてから…」と思っている方も多いかもしれません。ですが、できれば早めの相談をおすすめします。

 

ある40代の男性相談者、とにかく早く離婚をしたいという気持ちで、妻側と話し合いをされていました。しかし、どうもまとまらないため、相談に来られましたが、離婚したい一心で、若干無理な妻の要求も承諾していたことが原因で、結果として話合いが長引くとともに、財産分与で不利な立場に。「もっと早く相談すればよかった」とおっしゃっていました。

弁護士相談のメリット:

1. 法的権利の理解:自分の立場や権利を正確に把握できる

2. 戦略的なアプローチ:状況に応じた最適な対応方法を検討できる

3. 感情的な判断の防止:冷静な第三者の意見を聞ける

4. 将来のリスク回避:今後起こり得る問題を事前に認識し対策できる

5. 交渉力の向上:専門知識を基に、有利な条件を引き出せる可能性が高まる

 

最近、30代の女性から相談を受けました。夫からのモラハラ(モラルハラスメント)に悩んでいたのですが、証拠の集め方がわからなかったそうです。早めに相談に来てくれたおかげで、適切な証拠収集ができ、スムーズに離婚手続きを進められました。

離婚を考え始めたら、まずは専門家に相談してみてください。知識を得ることで、冷静な判断ができるようになりますよ。

 おわりに

離婚は確かに人生の大きな転機です。でも、それは新しい人生の始まりでもあります。適切な情報と支援があれば、この困難を乗り越え、新たな人生を歩み始めることができます。

皆さんの人生の新しい章が、希望に満ちたものになることを願っています。困ったときは、是非、専門家に相談してくださいね。一緒に最善の道を見つけていきましょう!