2020.04.16

株式上場と会社の支配

株式には、大きく分けて①資金調達、②会社支配という2つの側面があります。

株式上場することにより、①の点からは、新株発行や保有株式の売却といった資金調達の選択肢が生まれます。しかし、株式上場においては②の点も非常に重要な点であり、配慮が必要です。

株式上場により新規の株主が多数現れた場合、必然的に従前会社を支配してきたメンバー(以下、本稿では「オーナー」といいます。)の持株割合が低下します。上場していない会社の株主総会では、ある程度予定調和の中で議事が進められることが通常ですが、上場後は、一定程度の株式を保有する新規株主が株主総会に出席した場合、その発言内容も尊重せざるをえず、株主総会の運営もより慎重を期すことが求められます。

上場していない株式会社の大多数において用いられている譲渡制限株式という株式は、このように会社になじみのない者が株主として発言力を持つことを避けるため、株式譲渡の際も会社の承認を求める仕組みです。

しかし、株式上場を果たした場合に市場で売買される株式は、当然譲渡制限のない株式です。したがって、上場する際には新規の株主が会社の支配権を持つことへの配慮は必須となります。

一般的な対処法の一つは、株式上場する際、市場で自由に売買される株式の比率を抑えることです。実際のところ、新規上場会社の平均株主構成をみると、従前のオーナーの持株比率は安定株主比率といえる2/3を超す場合が多く見受けられます。株式上場後は、上場時の公募、その後の有償増資、相続等で株式が分散していくので、事後的にオーナー側の持株比率を高めることは困難です。そこで上場準備中にその比率を高めておくことが安全な方法です。

そして、もう一つの対処法が、議決権の少ない株式や無議決権株式を上場する方法です。通常は出資金額と議決権割合は比例関係にありますが、上場する株式につき議決権割合が低い株式、あるいは議決権を持たない株式とすることが可能です。もっともこのような方法は、従前のオーナーが通常より少ない出資割合で株式の支配権を維持する手段となるため、上場審査の際により慎重な審査がなされることとなります。